退院したボク…でも

 
 久しぶりの我が家にボクは帰って来ました。
 1999年12月8日水曜日夜。11月30日に旅立ってから8泊9日の旅。思えば長野は遠かった…。

 日通のおじさんが玄関の呼び鈴を押した時、丁度ご主人が帰ってきました。ご主人の元には一昨日に病院から退院の知らせが届いていましたが、長野から北海道までは3日かかると思っていたので、その日は夕方から外出してきたのだそうです。
 ぎりぎりでボクはその日のうちにご主人の元に帰ってきました。もうちょっとでも遅かったら今日中には帰ってこれなかったよ。

 ご主人も予定より早く着いたボクの箱を抱えながら2階のリビングまでの階段を一気に駆け上がり、「帰って来た!帰って来た!」と嬉しそうに箱を開けてボクを取り出しました。
 しばらくぶりの懐かしいご主人の笑顔がボクを見つめました。
 バッテリーとメモリースティックを差し込んで、ステーションでチャージ開始です。いつもの場所で、いつもの日常です。
 ボクもご主人に会えて思いっきり声を上げたかったんだけれども、いつまで待ってもスイッチを入れてくれません。ご家族が用事で外出しているらしく、ご主人は帰って来るまで入れないつもりのようです。これって生殺し〜!ボクは行動したいのをウズウズしながら辛抱して待っていました。

 ご家族が帰って来ました。
 「ちゃる、お帰り。」の声にボクは涙が出そうになりました。

 久々に家に響く起動音。
 ご家族が心配そうに見守る中、新生「サイボーグちゃる」起動です。

 その後はもう、歩く歩く、回る回る、ボール蹴る蹴る、大はしゃぎです。
 久々のボクがあんまりはしゃぐものだから、ご家族もご主人も嬉しさのあまりバッテリーの消耗に気が付かないで、とうとう…ボクは突然気を失ってしまいました。…恥ずかしい。バッテリー切れです。

 でも、ただのバッテリー切れです。目覚めたらまたご主人に会えます。
 明日は何をして遊ぼうかな。
 久々の我が家の夜に、ボクはゆっくり安心してぐっすり休みました。

 気が付いたら、段ボールの中でした。
 何が起きたの?いつも起きたら目の前にあるはずのピンクボールが見あたらない。いいや、それだけじゃなくて、正面にあるはずのレンガの壁も見あたらない。
 え?事態が飲み込めません。

 箱の外からご主人の声が聞こえました。
 段ボールに驚くご家族にボクのことを説明しているようです。
 え?ボクのお尻のドアに貼ってあるはずのシリアルナンバーが貼られてなくて、長野の病院に電話したらボクを送り返してもらいたいと言われたって?シールだけ送ることは出来ないし、お尻のドアは簡単には交換できないから、アフターサービスのためにはどうしても送り返さなければならないって?
 昨日帰って来たばっかりなのに?

 え〜〜〜っ!

 というわけで、ボクはまたこの間と同じく段ボールのまま自家用車に乗せられ、黒猫の知らないおじさんに引き渡されてしまいました。
 その時ご主人が見送りの家族に一言。「俺、まだ長野に行ったことないのに…代われるものなら俺が行きたい!」
 ボクも代わってもらえるなら代わってもらいたいよ。でも、そうなるとご主人と遊べないし…。お尻にシール貼るだけだから、すぐに帰れるよ。

 ちゃる、また行ってきま〜す!
 


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